コロナ渦以前は企業イベントの中でも表彰式やコンベンションの大型イベントでは懇親会や立食パーティなど飲食を伴うことが一般的でしたが、その機会は一時的に失われ、PC画面越しの対話を余儀なくされています。(2021年8月現在)
しかし、このままずっと画面越しの対面だけになるわけではなく、今までできなかったことに対して「リベンジ消費」や「リベンジトラベル」などといった抑圧された消費を今まで以上に回復するという強気な経済回復予想まで出てきています。
リアルの場でのイベントは企業活動として様々なメリットをもたらします。
そのため参加者や主催者もまた再開に向けて、いわゆる「リベンジイベント」を行うことが予想されます。
その一方で、このままリベンジイベントを行うことが本当に良いのか?
もっと企業活動にとってメリットになる方法で再開した方が良いのでは無いか?
コロナ渦をあくまでもリセットの機会として捉え、これまで以上に良いイベントを作ることがイベント産業を持続可能な産業へと変えるのではないでしょうか?
そこで、こういったイベントの環境負荷の側面からホテル、イベント制作会社様とCO2算出の専門機関と共同で算出いたしました。
サステナブルイベントネットワークにてイベントの環境負荷を調査した結果
廃棄物総量:2285.6kg
廃棄物量前提設定
内訳は詳細レポート(→会員専用記事へリンク)をご覧ください。
前提条件として
■イベント種類:企業イベント
■内容:表彰式、懇親会(正餐形式)
■都内開催
■会場:2000㎡クラス
■1泊2日
■全国参集型(国内)
■移動:飛行機、新幹線、公共交通機関
■人数:(参加者)1000名、(社員/運営スタッフ)100名
■算出時期:2021年8月
算出項目
■ホテル関係
・食品全般(食品残渣)
・テーブルウェア
・飲料保存容器
・装花
■イベント制作関係
・打合せ資料
・配布資料
・受付、展示造作
・ステージ造作
・装飾関連
・制作物
・表彰物
・スタッフ食事
このような項目が廃棄物としてイベント終了後にすべて廃棄されます。
※参加者が持ち込んだものなどは含んでいません。
華やかなステージは一瞬で廃棄物へ
約半年ほどかけて企画し、ようやく作り上げたステージは1日使用されただけで、イベント終了後には跡形もなくなっているのです。
仕込みの段階から見ている方は、ステージが組み上がっていくにつれて実感が湧いてくるのも束の間、リハーサルが始まり、本番が終わり、気付けば跡形もなくなっているのを見ると達成感と同時に少し寂しい思いが込み上げてくる時もあります。
それだけ貴重な場だからこそ、空間演出に力を注ぎます。
あのステージを目指して来られる方を最大限称え、さらなる高みを目指してもらう動機づけとしてのイベントを提供しているのだと再認識する瞬間でもあります。
現実は・・・
しかし、現実的なところを見てみると、1日のイベントのために廃棄物がかなり出ていることに以前から課題感を持っていました。
まだ使えるのに捨てられてしまうもの、使い捨て前提で使用されているものなど廃棄が出る前提で企画、手配をしていることが問題なのではないかと考えるようになりました。
解決する方法はないだろうか?
だとすると企画の段階から廃棄が出ない設計をすることで解決できるのではないでしょうか?何かを置き換えるだけではなく、物理的になくすことを優先して設計することがこれから求められるのではないでしょうか。
そのためのアイデアや知識、情報を交換し会う場「サステナブルイベントネットワーク」へのご参加はこちらから→Sustainable Event Networkへのリンク
イベントにおける主なCO2の排出源
全国参集型のような大型イベントで最も環境負荷が大きいのは移動に関する項目です。
環境負荷で特に問題視されているのが二酸化炭素(CO2)で、国際社会や日本行政も本格的に規制を強化しており、カーボンニュートラルに向けて削減目標も明確に定められ始めています。
国土交通省「航空分野におけるCO2削減の取組状況」
イベントにおいては飛行機や新幹線、公共交通機関、バス、自動車を利用する場合、現状ではCO2が大量に排出されます。
例えば、航空機であれば
【新千歳⇔羽田間】1人あたりCO2排出量:260kg
JAL「温暖化対策への参加 (フライトCO2排出量計算)」より算出
新幹線や電車なども電力を利用するため、発電時にCO2が発生するので
【大阪⇔東京間】1人あたりCO2排出量:7.1kg
JR東海「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」
また、イベント廃棄物も最終的には焼却/埋め立て処分されることによりCO2が発生します。環境省「廃棄物分野の温室効果ガス排出量の推移」によると2018年度の廃棄物分野の温室効果ガス排出量は3,782万トン(CO2換算)とされています。埋め立てをする場合もCO2の約20倍も温室効果があるメタンガスが発生します。
このメタンガスを回収し発電する取り組みなどが期待されているようです。
環境省「埋立地から発生するメタンガスの回収・処理設備の導入その他の必要な措置」
イベントにおけるCO2排出量
移動交通、イベント制作から出るCO2総量は
100.71 t-CO2
様々ある業界の中でも複雑で広範囲に渡るサプライチェーンを形成しているがゆえにその把握は難しく、細かいことを言うと「ものを配送する時のCO2」「オフィスで使用している電力のCO2」「廃棄物をリサイクルする場合のCO2」など様々考えられますが、直接的に排出する移動交通とイベント制作で出た廃棄物量からCO2に換算した数値をイベントの環境負荷としています。
吸収するには木が7100本必要
100.71t-CO2を吸収するには木が7100本必要です。
71本の木が1年間に吸収する量=1t WasteBox「CO2 1トンはどのくらい?」
よく目にする環境保護プログラム「植樹体験」でもせいぜい植えることができて100本ほどでは到底このCO2を吸収することが出来ません。
そして、植樹体験をしたあとにはイベントでCO2を排出していては吸収が追いつかなくなってしまいます。
本質的に環境負荷を減らすことは出来ているか?を数字をもとに可視化していくことが求められます。
廃棄の多いところから改善すれば最も効果的で効率よく、サステナブルなイベントを実施が可能となります。
こうした廃棄が出ない仕組みを企画/設計の段階からお客様とイベント制作側、会場提供側なども含め協議し、一緒に進めていくことが最も大事だと考えています。